SH中学A日程の不合格から、顔つきは変わった。とにかく食事以外の時間は部屋に閉じ籠り課題を解く。
残り1ヶ月は成績が伸びるという。本当にそうだと良いのだが、SH中学B日程の合格がわかっても、一瞬喜んだがすぐに机に向かう。
意識が明らかに変わった。これはまだまだイケる。
比較的今までもそうだった。塾のクラスが落ちると爆発的に勉強し、落ちる前のクラス以上のクラスに返り咲く。
逆境に強いのだろうか。
1月20日。I中学の試験日。
当初は渋幕の前哨戦の位置付け。受からなくてもいい。と思って申し込んだ学校だが、合格の重みを知った今はI中学かT中学はどちらか受かってほしい。
結果が出るのは渋幕の試験中だから渋幕の試験には心理的に影響しないが2月の戦いはガラリと変わる。
実力相応で合格率80%だったSH中学A日程にも不合格率20%の中に入ったわけで、I中学は到底受からないと予測していた。
息子は終始渋幕一択。I中学受かっても行くつもりはない、とキッパリ。
過去問も昨年のものしか解いておらず、その結果は最低点の50点マイナス。その上全く偏差値が届いてないにも関わらず何を言うか。
と思ったものの、幕張メッセに向かう途中、ずっと緊張する。と不安気な顔。
「行くつもりも無いなら適当にかましてこい。」
くらいに言った記憶はある。
幕張メッセのような場所で試験をやるのは息子史上初だ。社労士試験の会場と同じだから雰囲気はわかる。
天井の高さ。何千人もいるのに静まり返った空間。咳払いすら全員の耳に届くあの異様な空間。必要以上に緊張させられる。
「パパもあそこで受けたことあるから安心だな。まぁダメだったけど。」なんのアドバイスにもならなかった。
しかし何故幕張メッセ?2000人くらいなら市川の校舎でできるんじゃないか。などと思った。
試験の出来はまぁまぁ。ワンチャン受かんじゃね?と息子。
いや、前日の過去問でも散々だった奴が何を言う。
翌日はT中学。こちらは更に行くつもりはない、とのこと。過去問の結果は悪かったが、実力相応校。是非受かってほしいが。
偏差値は足りてるが、過去問では到底叶わないのは何故なんだ?とこのころはカラクリがわからなかった。
T中学の出来はイマイチ。1科目目の国語の時間に鼻血を出したとのこと。
ほじったのか?
いや、暑かったとのこと。
ネットで調べると、ブドウ糖を多めにとると鼻血が出やすくなるらしい。
ブドウ糖は脳の疲れを軽減するらしく、受験本番から食べるようにしていたからその影響か。
翌日の渋幕の日でなくて良かった。良い教訓だと思い、渋幕本番は算数と理科の前のみにブドウ糖を食べることにする。
翌日はいよいよ渋幕試験日。
彼にとってはこの学校のために始めた受験勉強。
渋幕の過去問だけは真剣に取り組んだ。過去10年解き、コベツバのtop gunも出題範囲は受講した。
10月に解いた過去問は最低点から60点と遠く及ばず。
算数は相性というより、ただただ難しい。これを簡単と思える猛者たちと戦うのか・・・。国語は合格者平均越え。理社は問題を読めばわかる。または、写真を見て考えればわかる問題ばかり。
さすが自調自考。問題もそれに則している。
こういう問題を出してくる先生の授業を受けたい、とのこと。私もそう思う。
1月に2次の過去問を解く頃にはようやく最低点のマイナス4まで辿り着いた。まだ足りない。
彼なりの作戦があった。
最低点に届きそうなのは2次。1次は手強い。だから落ちてもやむを得ない。1次の合格者がいない2次で勝負する。
校舎まで送り届け、別れ際、今日は東邦の時みたいに鼻ほじらないようにする。と一言。
おい…。やっぱりほじったんか。ブドウ糖について調べた時間返してくれ。
この日の午後12時、I中学の合格発表。